大阪高等裁判所 平成11年(ネ)3145号 判決 2000年9月27日
控訴人
日本スピンドル製造株式会社
右代表者代表取締役
【A】
控訴人
株式会社スピンドル建材
右代表者代表取締役
【B】
右両名訴訟代理人弁護士
本間崇
同
牧野知彦
被控訴人
山金工業株式会社
右代表者代表取締役
【C】
右訴訟代理人弁護士
金井和夫
同
金井亨
右補佐人弁理士
【D】
主文
一 本件各控訴をいずれも棄却する。
二 控訴人らの当審における請求をいずれも棄却する。
三 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、別紙イ号物件目録記載の物件を製造し、販売し又は販売の申出をしてはならない。
三 被控訴人は、控訴人らに対し、金七〇四万五〇〇〇円及び内金三八九万円に対する平成九年一二月一一日から、内金三一五万五〇〇〇円に対する平成一〇年一二月一五日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
本件は、控訴人らが被控訴人に対し、第一次的にその共有する実用新案権を被控訴人に侵害されたことによる実用新案権侵害及び不法行為に基づき、第二次的に法的保護に値する営業活動を故意に侵害された不法行為(当審で追加)に基づき、侵害行為の差止と損害賠償を求めた事案である。
一 判断の前提となる事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)
1 当事者
(一) 控訴人日本スピンドル製造株式会社は、建材及び成形品の製造並びに販売等を目的とする会社である。
控訴人株式会社スピンドル建材は、金属製又は木製建具の製造、加工、取付工事並びに販売などを目的とする会社である。
(二) 被控訴人は、建造物の内装、外装、外溝工事に関する設計及び請負施工並びにこれらに関する建設用材料の製造販売等を目的とする会社である。
2 控訴人らの権利
(一) 控訴人らは左記の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を共有している。
記
(1) 考案の名称 間仕切りパネル
(2) 出願日 昭和六二年七月六日
(実願昭和六二ー一〇四二九〇号)
(3) 出願公開日 平成元年一月一九日
(実開平一ー一〇一一〇号)
(4) 出願公告日 平成六年九月七日
(実公平六ー三四四八八号)
(5) 登録日 平成七年七月六日
(6) 登録番号 第二〇六七三一六号
(7) 実用新案登録請求の範囲(請求項1)
「単位パネル(1)を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであって、単位パネル(1)は木製の上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製の或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成され、縦枠(23)の内面の全長に亘ってパネル部材の端縁が嵌まる内溝条(25)が形成され、該縦枠(23)の外面の全長に亘って、単位パネル(1)を連結するための方立(50)が嵌合する外溝条(26)が開設されていることを特徴とする間仕切りパネル。」(以下「本件請求項」といい、その考案を「本件考案」という。)
(二) 本件考案の構成要件
本件考案の構成要件は次のとおり分説できる(甲二の二)。
A 単位パネル(1)を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであること。
B 単位パネル(1)は、木製の上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成されていること。
C 縦枠(23)の内面の全長に亘ってパネル部材の端縁が嵌まる内溝条(25)が形成されていること。
D 該縦枠(23)の外面の全長に亘って、単位パネル(1)を連結するための方立(50)が嵌合する外溝条(26)が開設されていること。
(右の各構成要件を、以下「構成要件A」などという。)
3 被控訴人の行為
被控訴人は、別紙イ号物件目録記載の間仕切りパネル(以下「イ号物件」という。)を、遅くとも平成八年ころから業として製造販売している(ただし、イ号物件のうち、イ号物件目録記載①ないし⑤の単位のパネル(1)のみから選択した単位のパネル相互を連結して構成した間仕切りパネルを被控訴人が製造し、販売し又は販売の申出をしているかについては、争いがある。)。
4 イ号物件の構成
イ号物件の構成は、以下のとおりである。
a イ号物件は、別紙イ号物件目録記載の一二種類の単位のパネル
(1、1a)から選択された、①ないし⑤の単位のパネル(1)を一つ又はそれ以上を含む複数種類の単位のパネルを用い、別紙第1図に示すように、その単位のパネル(1、1a)相互を連結して構成した間仕切りパネルである(ただし、イ号物件目録記載①ないし⑤の単位のパネル(1)のみの一つ又はそれ以上を用い、その単位のパネル相互を連結して構成した間仕切りパネルの構成を含むかについては、争いがある。以下①ないし⑫の単位のパネルを単位のパネル①、⑫などという。)。
b 各単位のパネル(1、1a)は、上の枠(21)・下の枠(22)・両縦の枠(23)からなる矩形パネル枠を有する。
上の枠(21)は、中実木製の上枠主体の上下面に凹溝を設け、上下の凹溝か又は上の凹溝のみに溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、上面の溝形金属杆が上方に突出している。
上の枠(21)の突出部分を除く中実木製の上枠主体の厚さは約三〇ミリメートル、全体の厚さは約五〇ミリメートルである(甲三、弁論の全趣旨)。
単位のパネル①、②、③、④、⑤(人の出入りする開口部のある単位のパネル。以下、本件考案の人の出入りする開口部のある単位パネルも含め、人の出入りする開口部のある単位パネル又は単位のパネルを「端パネル」ということがある。)の下の枠(22)は金属製である。
単位のパネル⑥、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪、⑫(人の出入りする開口部のない単位のパネル。以下、本件考案の人の出入りする開口部のない単位パネルも含め、人の出入りする開口部のない単位パネル又は単位のパネルを「中間パネル」ということがある。)の下の枠(22)は、中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に形の溝形金属杆(以下、「形」の記載を省略する。)が嵌入・ビス固定され、該溝形金属杆の下端部分は下枠主体の下方に突出している。
中間パネルの下の枠(22)は突出部分を除く中実木製の下枠主体の厚さが約八八ミリメートル、全体の厚さが約一〇〇ミリメートルとなっている(甲三、弁論の全趣旨)。
両縦の枠(23)の縦枠主体は中実木製である。
矩形パネル枠への取付物である引戸、塞ぎ板、開き戸、障子の各仕様は以下のとおりである(甲三、弁論の全趣旨)。
引戸 面材 シナ合板 四・〇ミリメートル
補強材 ラワン集成材
芯材 ペーパーコア
開き戸 面材 シナ合板四・〇ミリメートル
補強材 ラワン集成材
芯材 ペーパーコア
障子 縦框 スブルース
横框 スブルース
塞ぎ板 面材 シナ合板四・〇ミリメートル
補強材 集成材
芯材 ペーパーコア
c 単位のパネル①、②、⑥、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪、⑫は、縦の枠(23)の内面の全長に亘って内縦溝(25)が設けられているが、③、④、⑤は、縦の枠(23)の内面の全長に亘って内縦溝(25)が設けられていない。
d いずれのタイプの単位のパネルについても、縦の枠(23)には中実木製の縦枠主体の外面の全長に亘って外縦溝(26)を設け、この外縦溝(26)に、隣の単位のパネルと連結する連結片を、また、隣の柱と連結するための連結片を、単位のパネルを横に連結したり、柱と連結したりする前から予めビス固定している。これらの連結片は、縦枠主体の外面で突出している。
また、これらの連結片は外縦溝(26)の全長に亘ってはおらず、連結片の下端は、縦の枠(23)の下端から浮き上がっている。そして、連結片の側部で、連結されたパネル間の隙間を隠す隙間隠しが下方に延長している。
別紙第2図、第3図に示すように、単位のパネル(1、1a)相互の連結時には、両単位のパネル(1、1a)の外縦溝(26)に予めビス固定されている各連結片を相互に組み合わせてビス固定し、単位のパネルを柱と連結するときには、単位のパネルの外縦溝(26)に予めビス固定されている連結片を、柱に連結固定する。
二 争点
1 イ号物件
被控訴人が製造し、販売し又は販売の申出をしているイ号物件は何か。被控訴人が製造し、販売し又は販売の申出をするおそれのあるイ号物件は何か。
2 第一次請求(実用新案権侵害)
(一) イ号物件の構成は本件考案の技術的範囲に属するか。
(二) イ号物件は本件考案と均等であることによりその技術的範囲に属するか。
(三) 本件請求項は、単位パネルを横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルにおいて、端パネルの構成のみを代表的に規定したものと解すべきか。
右解釈を前提として、イ号物件の構成は本件考案の技術的範囲に属するか。
(四) 損害
3 第二次請求(法的保護に値する営業活動の侵害。当審追加請求)右不法行為の成否及び損害
三 争点に関する当事者の主張
1 争点1(イ号物件)について
(控訴人らの主張)
被控訴人は、端パネルから選択した単位のパネル(1)を相互に連結して構成した間仕切りパネルを含め、イ号物件を製造し、販売し若しくは販売の申出をし、又は、右間仕切りパネルを製造し、販売し若しくは販売の申出をするおそれがある。
2 争点2(第一次請求)について
(一) 争点2(一)
(控訴人らの主張)
(1) 構成要件A該当性について
イ号物件は、一二種類の単位パネル(1、1a)から選択された、単位パネル①ないし⑤のパネル(1)の一つ又はそれ以上を含む複数種類の単位のパネルを用い、別紙第1図に示すように、その単位のパネル(1、1a)を相互に連結して構成した間仕切りパネルであるから、本件考案の構成要件Aを備えている。
(2) 構成要件B該当性について
① イ号物件の単位のパネル(1、1a)は、上の枠(21)・下の枠(22)・両縦の枠(23)からなる矩形パネル枠を有する。
② 単位のパネル(1、1a)の上の枠(21)は、単位のパネル①、④、⑤、⑥、⑧、⑩、⑪、⑫が中実木製の上枠主体の上下面に凹溝を設け、上下の凹溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、上面の溝形金属杆が上方に突出しており、②、③、⑦、⑨が中実木製の上枠主体の上下面に凹溝を設け、上の凹溝に溝形金属杆(下の凹溝には金属杆は設けられていない。)が嵌入・ビス固定され、上面の溝形金属杆が上方に突出している。
右のいずれの上の枠(21)も、中実木製上枠主体の上下面に凹溝を設け、上下の凹溝か又は上の凹溝のみに溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、上面の溝形金属杆が上方に突出しており、上の枠(21)の凹溝に嵌入・ビス固定され上方に突出している溝形金属杆は、単位のパネルを取り付ける躯体に熔接固定する必要のために嵌入・ビス固定されているものであって、上の枠(21)の強度保持のために必須の部材というものではない。
したがって、上の枠(21)は、中実木製の上枠主体に着眼すれば、材質としては「木製」ということができる。
③ 単位のパネル①ないし⑤(端パネル)の下の枠(22)は金属製であり、⑥ないし⑫(中間パネル)の下の枠(22)は、中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、該溝形金属杆の下端部分は下枠主体の下方に突出しているというもので、金属製ということができる。
仮に後者が金属製でないとしても、溝形金属杆という金属製の部材を金属帯板を曲げ加工して形成させ、中実木製の下枠主体の下の横溝に嵌入・ビス固定させ、その下方は下に突出させて躯体との熔接加工を可能ならしめている点で、金属製の部材を利用し、それに中実木製の下枠主体を付加したものである点で、本件考案の構成要件Bの下枠に関する要件を一部利用したものにすぎない。
いずれの下の枠(22)も、熔接固定が可能でなければならないばかりでなく、施工状態にばらつきがなく、品質も一定し、耐久性があり、その上に嵌め込まれるパネル部材を下から支えるための強度が要求される点では、前者も後者も全く同様である。
被控訴人は、中間パネルの下の枠(22)が「金属製」であるとすることに同意した結果となる主張を原審の平成一〇年一〇月六日付の第八準備書面において行っている。この主張は、丙考案という乙第一八号証の公報を引き合いに出しつつ、本件考案の単位パネルの下枠の材質を端パネルに限らず、中間パネルも共に金属製とすることの必要性を、具体的に理由を掲げて詳細に強調したものであるが、その意味するところは、イ号物件の単位のパネルの下枠の材質についても全く同様に当てはまる主張である。したがって、イ号物件の単位のパネルは、端パネルに限らず、中間パネルも下枠が「金属製」であることにつき、当事者間で争いがないといって差し支えない。
④ 両縦の枠(23)は、いずれも樹脂を含浸させた木材にて形成されている。
⑤ 矩形のパネル枠への取付物は、いずれもパネル部材の木製の部分ないし木材を主体とする部分の占める割合が本件公報添付第1図に示されているガラス障子やガラス窓付きの引戸等のパネル部材と比べて全く変わりなく、「木製或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成されている」という要件を具備する。
(3) 構成要件C該当性について
イ号物件の単位のパネル①及び②、⑥ないし⑫は、単位のパネルの縦の枠(23)の内面の全長に亘ってガラス障子の当たり部分などパネル部材の端縁が嵌まる内縦溝(25)が形成されているから、本件考案のCの構成要件に該当する。
また、単位のパネル③ないし⑤では、単位のパネルの縦の枠(23)の全長に亘って内縦溝(25)は設けられていないものの、横の桟の上側にガラス又はガラス障子を嵌め込んでいるから、少なくとも横の桟の上側にはパネル部材の端縁が嵌まる内縦溝(25)が設けられている。
したがって、これらについても、少なくとも本件考案の構成要件を一部利用している。
(4) 構成要件D該当性について
イ号物件の単位のパネルは、外面の全長に亘って外縦溝(26)が開設されており(なお、本件考案において外溝条(26)の深さについては特に規定されていない。)、そこには単位のパネルを連結するための連結片が嵌入固定されていて、単位のパネルの連結時にそれぞれの連結片を相互に組み合わせてビス固定するから、本件考案のDの構成要件に該当する。
なお、本件考案のDの構成要件にいう「方立(50)」とは「単窓同士を横方向に連結したときの連結部分」であり(甲七)、そのような方立(50)の意味からすれば、イ号物件の連結片が外縦溝(26)の全長に亘っておらず、連結片の下端が縦枠の下端から浮き上がっているとしても、連結片同士をビス固定するときに連結部分としての方立(50)が形成されることには変わりがない。
また、本件考案のDの構成要件のうちの「該縦枠の外面の全長に亘って」という部分は、「外溝条(26)」にかかる文言であって、「単位パネルを連結するための方立(50)」にはかかっていないから、ここにいう方立(50)の長さが単位パネルの外枠の全面の全長に亘って開設されている外溝条(26)と同一の、柱として立設しているものでなければならないということにはならない。
(被控訴人の主張)
(1) 構成要件B不該当性について
① イ号物件の単位のパネルの上の枠(21)は、全部が木製ではなく、その下面及び上面に設けた凹溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定されている。両縦の枠(23)についても同様である。また、下枠についても、全部が金属製ではなく、中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定されているものもある。
② また、「木材を主体とする」という要件については、本件実用新案権に係る明細書(以下、「本件明細書」という。)の詳細な説明ではガラス障子(3)ないしガラス窓付きの引戸(4)が挙げられているにすぎないから、少なくともイ号物件③(横の桟の上側にガラスを嵌め込んだもの)は、本件考案の単位パネルに該当しない。
(2) 構成要件C不該当性について
イ号物件の単位のパネル③ないし⑤については、内縦溝(25)は全長に亘っていない。なお、これらのタイプの単位のパネルにおいては、内縦溝(25)は横の桟よりも上側にのみ設けられており、その長さは縦の枠(23)の全長の三割程度であり、縦の枠(23)の内面の大部分において内縦溝(25)が開設されているとすらいえないものである。また、イ号物件の単位のパネルは、全て上の枠(21)と下の枠(22)の間に横の桟を設けており、横の桟によって内縦溝(25)は上下に分断されている。
したがって、少なくともイ号物件③ないし⑤は本件考案のCの構成要件に該当しない。
(3) 構成要件D不該当性について
① 本件考案では、単位パネルは縦枠(23)の外溝条(26)に嵌合する方立(50)をもって連結することを前提としている。したがって、本件考案の単位パネルの縦枠(23)は現場施工時における方立(50)の嵌合を可能とするような外溝条(26)を備えていなければならない。
これに対し、イ号物件の単位のパネルでは、隣の単位のパネルと連結する連結片或いは隣の柱と連結するための連結片が予めビス固定されているというものであり、縦の枠(23)の外縦溝(26)はそれほど深いものである必要がなく、単に化粧溝の機能しかない。
② また、構成要件Dにいう「方立(50)」とは、そもそも出入口などの脇にある小柱の意味であり(乙一)、柱として立設しているものをいうのであるから、方立(50)の長さは単位パネルの縦枠(23)の外面の全長に亘って開設されている外溝条(26)と同一でなければならない。
しかし、イ号物件の単位のパネルの縦の枠(23)は外面の全長に亘って外縦溝(26)が設けられているが、その連結片は外縦溝(26)の全面に亘っておらず、連結片の下端は縦の枠(23)の下端から浮き上がっている(なお、該連結片の側部で、連結されたパネル間の隙間を隠す隙間隠しが下方に延長しているにすぎない。)。
③ そして、本件考案の方立(50)とは、本件明細書の詳細な説明における(作用及び効果)の記載によれば、施工現場で初めて単位パネルの外溝条(26)に嵌合されるものであり、この嵌合までは単位パネルと方立(50)は独立しているし、単位パネルの外溝条(26)は開放状態にあるものであると解される。
これに対し、イ号物件は、工場生産された単位のパネルが既に連結片を具えているのであり、この単位のパネルは施工現場で初めて方立(50)と嵌合できるような外縦溝(26)を何ら有していない。そして施工現場においては、この連結片相互をビス固定して単位のパネル相互を連結するのであり、外縦溝(26)と方立(50)とを嵌め合わせて単位パネル相互を連結する本件考案とはその連結の仕組みが全く異なる。
④ なお、間仕切りパネルについては、枠連結タイプの間仕切りパネルとスタッド連結タイプの間仕切りパネルとの二種類の方立(50)があることは業界の常識であり(乙一〇ないし一六)、本件考案における方立(50)は、スタッド連結タイプのものであって、イ号物件の方立(50)は枠連結タイプのものであるという点で明らかに異なる。
⑤ そもそも、本件考案は、現場での大工仕事によって間仕切りを施す場合に施工時間が長くかかりコスト高を招来するという従来技術の問題点を解決することを目的の一つとするものであるから、単位パネル相互の連結手段が簡素でなければ本件考案が目的とする施工能率の向上は達成されないことになる。この点、単位パネル同士の連結部材には、何種類もの金具を用いて行う複雑で手間のかかるものから、本件考案のような簡単な柱の嵌合方式まで様々なものがあるのであって、本件考案の右目的を達成するためには、柱の嵌合方式という簡素な連結手段を採用することが必須というべきである。
これに対し、イ号物件の連結方式は、パネル連結安定性上の作用効果を重視した反面、本件考案よりも施工能率向上の面の作用効果が劣るという点でも異質であり、イ号物件の連結片は、本件考案の「方立(50)」ではないというべきである。
⑥ したがって、イ号物件の単位のパネルは、本件考案のDの構成要件に該当しない。
(二) 争点2(二)
(控訴人らの主張)
(1) 仮に、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)が金属製といえないとしても、本件考案とイ号物件との相違点は、中間パネルの下枠(22)が、本件考案では金属製であるのに対し、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)は、中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、該溝形金属杆の下端部分は下枠主体の下方に突出しているという構造になっているという点のみである。
(2) そして、平成一〇年二月二四日、最高裁判所は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品などと異なる部分が存する場合であっても、①右部分が特許発明の本質的部分ではなく、②右部分を対象製品などにおけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、③右のように置き換えることに当該発明の属する技術的分野における通常の知識を有するもの(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、④対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたるなどの特段の事情のない時は、右対象製品等は特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である、との判決を言い渡した(以下右各均等要件を「均等要件①」などという。)。
(3) 右の理は実用新案権についても妥当すると解されるところ、本件考案とイ号物件との間には前記のような相違点があるものの、それは次に述べるとおり右最高裁判決の掲げる①ないし⑤の要件を充たすものであるから、両者は均等であり、したがって、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属すると解するのが相当である。
① 均等要件①(非本質的部分)について
本件考案において、端パネルの下枠(22)が金属製であることが本件考案の本質的部分であることは、本件明細書の詳細な説明の単位パネルの下枠(22)を金属製とする理由を記載した部分(公報3欄4行から6行、25行から27行、6欄5行から7行。以下、引用する場合、記載箇所の摘示又は「公報」の記載を適宜省略する。)が全て端パネルのみに当てはまることから明らかである。
また、中間パネルの下枠(22)も、端パネルの下枠(22)と同様に躯体と熔接固定が可能であり、かつ、施工状態にばらつきのない品質の一定した耐久性のある間仕切りとして、その上にはめ込まれるパネル部材を下から支えるための強度が要求されるが故に、金属帯板の曲げ加工によって形成される金属製であることは、本件考案の本質的部分ということができる。
イ号物件は、端パネルの下の枠(22)が本件考案と全く同様に金属製であるほか、中間パネルの下の枠(22)は、本件考案における本質的部分としての下枠(22)が金属製である要件と同じく溝形金属杆を用いている。
しかして、イ号物件は、溝形金属杆の上面に、下面に横溝を設けた中実木製の下枠主体を嵌入・ビス固定させている点においてのみ異なっているのである。
したがって、端パネルのように、下枠(22)が金属帯板の曲げ加工によって形成されている金属製であるものと、右の中間パネルの下枠(22)のように、その他に中実木製の下枠主体とを嵌入・ビス固定しているものとの構造上の差異は、本件考案の本質的部分ということはできない。
従来の技術及び問題点について、明細書には、「近時新築される校舎の殆どは、鉄筋コンクリート作りの構体内側を金属質のパネルにて複数の教室に、或いは教室と廊下とに仕切っている。・・・金属質パネルは外観上、冷たく感じ、又、熱伝導が良好であるため、パネル自体が冬は冷たく夏は熱くなり、学舎としての環境作りには問題があった。・・・木材で間仕切りを施すには、現場での大工仕事が主となり、施工期間が長くかかり、コスト高を招来すると共に、施行状態にばらつきがあり、品質が一定しない新たな問題が生じる。又、下枠(22)を木製とすると、例えば引戸用レールリ(「引き戸用レールの」の誤り)取付に対する耐久製(「性」の誤り)、靴の踏み付けに対する耐久製(「性」の誤)が低下する問題が生じる。」(2欄6行から3欄6行)と記載され、作用及び効果として、明細書には、「単位パネル(1)は、下枠(22)以外は木材にて形成されたパネル枠(2)に、木材製、或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成されるため、・・・室内に暖かみを醸し出すことができる。目立たない下枠(22)は金属製としたため、引き戸用レールリ(「引き戸用レールの」の誤り)取り付けや、靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる。・・・本願のように、単位パネルの大部分を木材にて形成した単位パネルは、金属製パネルに比べて断熱作用が優れているため冷暖房の効率を上げることが出来る。」(3欄20行から39行)と記載されている。したがって、本件考案においては、木材を主体として用いることを基本にして、外部に露出しない部分で、かつ、耐久性を要する部分については、最低限の金属を用いて耐久性を高めるという構成を採ったことが従来技術に見られない特有の解決原理である。右解決原理を備える要素を特許請求の範囲に記載された構成要件Bから取り出すと、まず、端パネル、中間パネル共に両縦枠(23)が木製であることは、本件考案の中核をなす特徴的部分、すなわち、本件考案の本質的部分である。また、上枠(21)は下枠(22)同様に目立たない部分であるが、耐久性を要しないことから、端パネル・中間パネル共にこれを木製とすることは本件考案の本質的部分である。また、下枠(22)については、まず、端パネルについては、靴の踏み付け、あるいは引戸用レールの取付(3欄25行から27行)のために、パネル枠自体に耐久性が要求されるため、パネル枠主体そのものを金属製とすることが必要であり、これは本件考案の本質的部分である。中間パネルの下枠(22)については、静荷重あるいは溶接に対する耐久性を要するが、これは端パネルのように直接パネル枠自体に耐久性を要求されるものではないから、前記の耐久性をもたせるため最低限の金属を用いるという技術思想から、パネル枠自体を金属製にすることは本質的部分ではなく、耐久性をもたせるために必要な範囲で金属製の部材を用いることが考案の本質的部分である。
そうすると、仮に、構成要件Bの「金属製の下枠(22)」という要件について中間パネルにおいても「下枠(22)が金属製(すなわち、金属で構成される)」であると解釈するとしても、下枠主体を木材で構成し、アンカーボルトとの接続のために下枠主体の下部に設ける杆を金属で構成することで、イ号物件は、本件考案に特有の解決原理と実質的に同一の原理に属する解決手段を備え、本件考案の技術思想を満たすことができるのであって、下枠主体を木材で構成するという点で、本件考案の構成要件Bと異なる部分があるとしても、かかる部分は本件考案の本質的部分ではないから、構成要件Bとイ号物件の構成との間の均等を論ずる余地があることとなる。
② 均等要件②(置換可能性)について
本件考案の中間パネルの下枠(22)を、請求の範囲の文言である金属製に換えて、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)のような中実木製を主体とするものに置き換えても、本件考案の目的を達することができ、同一の作用効果を奏することはいうまでもない。
したがって、本件考案の中間パネルの下枠(22)を金属製としたものと、イ号物件の⑥ないし⑫における下の枠(22)のように中実木製を主体とするものとの間には、置換可能性がある。
③ 均等要件③(置換容易性)について
右のように置き換えて同じ目的や作用効果を達成することに、当該考案の属する技術的分野における通常の知識を有するものが、イ号物件の製造時点において容易に想到することができたものであることは、被控訴人を含む複数の当業者が、本件考案の実用新案公報が発行された後に、イ号物件と酷似した製品(中間パネルの下の枠(22)を木製を主体としたもの)を製造販売し始めたという現実の事実に照らして経験則上明らかである。
④ 均等要件④(推考非容易性)について
本件考案にかかる実用新案登録出願は、特許庁審査官より平成五年八月二〇日を起案日とする拒絶理由通知を受けた。
右拒絶通知の理由の一つは「明細書の記載中、下枠(22)の材質に関する記載が不明瞭である。(<下枠(22)>が金属製であるにもかかわらず『木質パネル枠』と記載されている)」という点にあったが、原告らは「木質」を省略した訂正明細書を提出するという手続補正を行い、その結果、出願公告の決定がなされ、登録されるに至ったものである。
これに対し、イ号物件は、本件考案が平成元年一月一九日に公開され、平成六年九月七日に公告された日よりもずっと遅れて平成八年ころから業として製造販売されるに至ったものであって、経時的に観察するだけでも、本件考案を模倣した結果となっており(なおイ号物件を製品化したもののカタログ中の商品名「木製学校間仕切WSP―一〇五」も、控訴人らの本件考案の実施品の商品名「木製学校用間仕切SPW」と酷似している。)、拒絶理由通知で引用されたイ、ロ、ハの各公知引用例とは同一でもなければ、本件考案の出願時点で、本件考案の開示を受けることなく当業者がイ、ロ、ハの公知例から容易に推考できたものでないことは明らかである。
⑤ 均等要件⑤(意識的除外)について
本件実用新案権の補正手続で、当初の出願明細書で下枠(22)を木質パネル枠と限定していた請求項①が削除され、金属製の下枠(22)を骨格とした請求項②が残され、同時に端パネルの下枠(22)を金属製とした理由を示す箇所が考案の詳細な説明に挿入されたことは、端パネル及び中間パネルの下枠(22)を木製とするものは除外したことを意味するにすぎず、「中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定され、該溝形金属杆の下端部分は下枠主体の下方に突出している」ような中間パネルの下枠(22)の構造を意識的に除外したことにはならない。
したがって、端パネルの下の枠(22)は、本件考案と同じ金属製であるが、中間パネルの下の枠(22)も、端パネルの下の枠(22)と同様な「金属帯板の曲げ加工によって形成されている」溝形金属杆を上下面の横溝に嵌入・ビス固定した中実木製の下枠主体である以上、このような中間パネルの下の枠(22)を有するイ号物件を本件考案の出願手続において請求の範囲から意識的に除外した等の特段の事情があるわけではない。
(被控訴人の主張)
(1) 均等要件①(非本質的部分性)について
① 本件考案においては、下枠(22)が金属製であることは本質的なものである。
② そもそも、本件考案は、木材で間仕切りを施そうとして現場での大工仕事に頼る場合、① 施工期間が長くかかる、② コスト高を招来する、③ 品質が一定しない、④ 下枠(22)も木製の場合は、端パネルの引戸用レールの取り付けに対する耐久性、靴の踏み付けに対する耐久性が低下するといった問題が生じるので(2欄末行から3欄6行)、この問題を解決するためになされたのである。
③ コスト或いは品質の観点からは、木材よりも金属の方がパネル枠の材質としては望ましい(2欄9行から10行)。しかし、上枠(21)・縦枠(23)・横桟は目立つから、これらを金属製にすると暖かみが損なわれてしまうので、これらの材質は木材にせざるを得ない。そして、実施例では、前記③の品質の問題については、反りや狂いの少ない木材の集成材を使用することでこれを解決し、さらに、集成材に間伐材を利用すれば②のコストの問題も解決できるとされている(4欄18行から24行)。そして、その文脈で、「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」と続くのである(4欄29行から30行)。すなわち、目立たない下枠(22)ならば金属製にしても単位パネル全体の暖かみを損なうことはなく、それでいて、木材に比べて反りや狂いもなくコストも低減できるメリットもある。このようなことから、中間パネルにおいても、下枠(22)が金属であることは技術的に重要な意味をもつ(そもそも端パネルの下枠(22)だけを金属製にして中間パネルの下枠(22)を木製にすれば、中間パネルについては、大工仕事で間仕切りを施した場合と同様、施工状態にばらつきを生じ、品質が一定しなくなるから、中間パネルの配置か所において反りや狂いが生じ、間仕切りとしての耐久性が確保できなくなることは明らかである。)。
④ 下枠(22)を金属製とすることが端パネルの耐久性を高めるためだけになされたものでないということは、本件実用新案登録請求の願書(乙五)に添付された明細書(以下「当初の明細書」という。)と本件公報とを比較すると、明確になる。
すなわち、控訴人は当初の出願時、下枠(22)の材質を限定しないものと、金属製に限定したものの二つを請求項として挙げていた。したがって、もし控訴人が主張するように、下枠(22)を金属製とすることの本質的な意味が端パネルの下枠(22)の耐久性の向上にあるとするなら、その旨の記載があってしかるべきである。ところが、当初の明細書にはそのことについて全く記載はない。明細書の実施例は、当初の明細書も本件明細書も全く同じで、下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されているものであるにもかかわらず、本件考案が解決すべき問題点として挙げられているのは、施工期間と品質とコストだけである。したがって、本件明細書のうち、控訴人らが、金属製の下枠(22)が端パネルにのみ本質的であることの根拠として挙げている記載は、審査官の拒絶理由通知を受けて、控訴人らが自発的に当初の明細書を訂正していく過程で、下枠(22)を金属製とすることで端パネルの下枠(22)の耐久性を高めることができるという効果を付加したにすぎないものというべきである。
⑤ よって、中間パネルにおいても下枠(22)が金属製であるということは、コストや品質の問題を解決するために欠くことのできない事項なのであり、本件考案の本質的な部分である。
(2) 均等要件②(置換可能性)について
① 右(1)からすれば、金属製の下枠(22)をイ号物件の中間パネルの下の枠(22)に置き換えることで単純に同一の作用効果を奏すると結論づけられるものではないことは明らかである。
② さらに、イ号物件の中実木製の下枠主体の上下面に横溝を設け、下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定され該溝形金属枠の下端部分は下枠主体の下方に突出しているという下の枠(22)と金属製の下枠(22)とでは、次のような相違点が生ずる。
<ア> 表面上は金属製から木製に替わるので、木材の持つ暖かみという点ではより好ましく、木質のパネル枠として調和も取れる。
<イ> 下の枠(22)は木製が主体となっているため、断熱性が向上する。
<ウ> 下枠(22)が金属製だと錆びることもありうるが、下の枠(22)を木製主体とすることで錆防止にもなる。
<エ> 下の枠(22)を木製主体とすることにより、木製主体の縦の枠(23)との連結が容易になる。
<オ> 下の枠(22)の製造工程が複雑になり、コストは上昇する。
③ したがって、両者の作用効果が同一であるとはいえない。
(3) 均等要件⑤(意識的除外)について
① 本件実用新案権の出願過程においては、本件考案の単位パネルの下枠(22)の点について、以下のような経過があった。
すなわち、本件実用新案権の出願当初の明細書においては、実用新案登録請求の範囲①は、「単位パネル(1)は、上枠(21)、下枠(22)及び両縦枠(23)にて形成される矩形の木質パネル枠(2)に木質のパネル主体を嵌めて形成され」とされ、同②は、「下枠(22)は金属製である実用新案登録請求の範囲第一項に記載の間仕切りパネル」と記載されていた。これに対し特許庁の審査官から「明細書の記載中、下枠(22)の材質に関する記載が不明瞭である。(金属製であるにもかかわらず『木質パネル枠』と記載されている)」との点で明細書及び図面の記載が不備であるという拒絶理由が通知された。そこで、控訴人らは、自発的に実用新案登録請求の範囲を「単位パネル(1)は木製の上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成され、」と補正した。控訴人らは併せて意見書も提出し、「単位パネル(1)は、パネル枠(2)の目立つ部分である縦枠(23)、上枠(21)の表面は木材にて形成されており、・・・又、目立たない下枠(22)は金属製とした・・・」、「本件考案のパネル枠、下枠(22)以外の縦枠(23)、上枠(21)を木材にて形成し、この点から木質パネル枠としたにすぎない。しかし無用の誤解が生じることを避けるために、訂正明細書では『木質』の語句を省きました。」とした。その結果、拒絶理由は解消されたとして本件考案は出願公告されたのである。
② 右のような一連の経過からみれば、控訴人らは当初から下枠(22)の材質に着目して出願しており、これに対し、特許庁の審査官が「金属製であるにもかかわらず『木質パネル枠』と記載されている。」と指摘したのは、下枠(22)を金属製とするなら、たとえそれが目立たない存在であっても木質パネル枠という言葉にはそぐわないと判断したが、そうかといって、当初の明細書の詳細な説明にも、単位パネルである端パネル(1)の下枠(22)及び中間パネル(1a)の下枠(22)(22a)が金属製としか記載されておらず、これ以外の素材からなることについては全く記載がなかったので、金属製以外の下枠(22)を有する単位パネルの存在を読みとれなかったからに他ならない。
そこで、控訴人らは、自発的に補正し、下枠(22)も含めて木質パネル枠としていた請求項①を削除して下枠(22)を金属製に限定し、かつ、木質パネル枠を単位パネル枠と訂正したのである。そしてその限定に伴う顕著な効果として、補正書の考案の詳細な説明の(作用及び効果)の項で「目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや、靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる。」という記載を付加し、さらに平成五年一二月一七日付け意見書において「目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる。」ことを強調するとともに、「引例ロは、現場で大工工事によって施工する木製のサッシュであって」などと主張し、下枠(22)を金属製に限定することにより、本件考案を引用例ロと区別して拒絶理由を回避できるようにしたのである。
したがって、控訴人らが補正によって下枠(22)を含めて木質パネル枠としていた請求項を削除したということは、木材を主体とした下の枠(22)を備えるイ号物件の中間パネルを意識的に除外したということにほかならず、このような中間パネルは、本件考案に用いられる単位パネルとしては予定されていないというべきである。
③ さらに、横に連結された単位パネルは、その全体の重量が下枠(22)で支えられることになるが、下枠(22)を木製にした場合、その支持強度が不足し、また、木材の乾燥収縮に伴って下枠(22)が短くなったり反ったりして、間仕切りパネルの連結状態の不安定化を招くおそれがある。
これに対し、下枠(22)を金属製にすれば、重量を支持する下枠(22)として強度の向上を図ることができ、寸法精度を保持できると共に、下枠(22)の反りが防止されることともなり、間仕切りパネルの連結状態を安定させる。また、金属製の下枠(22)は、木製の下枠(22)に比べて安価であるため、単位パネルの製作コストを低減できることや木製下枠(22)に比べて輸送中に凹んだり傷つく等の損傷を受けることが少ないというメリットもある。
したがって、本件考案で出入口の有無を問わず単位パネルの下枠(22)を金属製にしているのは、間仕切りパネルの品質維持性能を上げる上で必須と考えられたからである。
(三) 争点2(三)
(控訴人らの主張)
(1) 本件請求項は、単位パネルを横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルにおいて、人の出入りする開口部のある端パネルの構成のみを代表的に規定したものと解すべきである。
(2) 本件請求項では「単位パネル(1)は木製の上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に・・・」とされ、単位パネルのパネル枠(2)は「金属製の下枠(22)」を有していることが要件とされている一方、本件請求項の冒頭では「単位パネル(1)を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであって」とされていることから、本件考案は、文理上、あたかも金属製の下枠(22)を有する矩形のパネル枠(2)にパネル部材を嵌めて形成された単位パネル(1)のみを横に連結した間仕切りパネルを対象としているように読める。
しかし、横に連結した単位パネルの全てが金属製の下枠(22)を有していなければならない理由はない。
すなわち、本件明細書の詳細な説明では、「下枠(22)を木製とすると、例えば引戸用レールの取り付けに対する耐久性、靴の踏み付けに対する耐久性が低下する問題が生じる。」とか、「また、目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや、靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる。」旨説明されていることから明らかなように、本件請求項における「金属製の下枠(22)」はあくまでも、引き戸や開き戸等の開口部(人の出入りすることができる箇所)を有する端パネルについての要件とみることが合理的である。
これに対し、開口部を有しない中間パネルについては、本件明細書の詳細な説明では、「中間パネル(1a)の上部には端パネル(1)と同様のガラス障子(3)、下部には塞ぎ板(5)が嵌まっている。」と説明され、また、本件明細書添付図面第1図の単位パネル(1)の中間に2つの中間パネル(1a)が図示されているが、このような中間パネルの部分は人が出入りできないのであるから、その下枠(22)に引戸用レールを取り付けたり、人が靴で踏み付けることもないのであって、下枠(22)を金属製にする必要はない。
このように本件明細書の詳細な説明及び添付図面を参酌すれば、本件請求項の単位パネルの「金属製の下枠(22)」という要件は、端パネルについての構成を代表的に規定したものと解することが相当である。
(3) 構成要件A該当性について
イ号物件は、単位のパネルを横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであるから、本件考案の構成要件Aに該当する。
(4) 構成要件B、C、D該当性について
前記(一)における主張と同じ
(被控訴人の主張)
(1) 本件考案の間仕切りパネル
① 本件考案は、単位パネルはすべて(出入口用の端パネルでないものも)下枠(22)は金属製のものであり、その単位パネルを横に連結して仕切る間仕切りパネルである。
② すなわち、本件考案は単位パネル同士を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであって、単位パネルと非単位パネルとを連結する間仕切りパネルではない。
仮に、一枚でも単位パネルを使用していれば本件実用新案権の侵害にあたるとすれば、本件請求項では、単位パネルに連結される非単位パネルは全く特定されていないことになるが、本件明細書の詳細な説明によれば、本件考案の目的が、木材の特質を利用した単位パネルを用いて間仕切りを行うことによって、室内に暖か味を醸し出し、併せて断熱効果を向上して暖冷房の効果を上げることにある以上、自ずと非単位パネルの構成には限定があるはずである。例えば、外観上冷たく感じ、また熱伝導が良好であるため、冬は冷たく夏は熱くなる金属質のパネルを非単位パネルとした間仕切りパネルが本件実用新案権の技術的範囲に属さないことは明らかである。
したがって、本件考案においては、単位パネルに組み合わされるパネルの構成が具体的に特定されたものでなければならず、本件請求項の記載からすれば、それは単位パネル同士を連結するということで特定されているとしか読みとれない。
それゆえ、本件考案の単位パネルは、それが出入口用ではないとしても、下枠(22)は金属製ということになる。
よって、本件実用新案権の技術的範囲は、下枠(22)が金属製である単位パネル同士を連結したものに限定されるというべきである。
(2) イ号物件の間仕切りパネル
イ号物件は、金属製の下枠(22)を有しない単位のパネルも連結されることが予定されているのである。
したがって、仮にイ号物件の単位のパネルに本件考案の単位パネルの構成要件を充たすものがあったとしても、イ号物件としては本件考案の構成要件に該当しない。
なお、本件明細書の詳細な説明添付図面において、中間パネルの下枠(22)を(22a)とし、端パネルの下枠(22)の(22)と区別して図示されているのは、前者が塞ぎ板(5)を嵌めるのに対し、後者が引戸(4)を嵌めるため、その形状が異なるからであって、材質を異にするものとは読みとれない。
本件明細書の詳細な説明の(実施例)の項の記載によれば、「各パネルのパネル枠(2)は上枠(21)、下枠(22)、両縦枠(23)及び縦枠(23)間の上部に設けた横桟(24)によって縦長の矩形体に形成され」と記載されており、この「各パネル」とは、文脈からみて端パネルと中間パネルの両者を指すことは明らかである。そして、「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」として、下枠(22)は端パネルと中間パネルの両者を含めて金属製だとしている。このように、右(実施例)の記載をみる限り、端パネルと中間パネルの下枠(22)の材質は同一であるとしか読みとれないのである。
(3) 各構成要件不該当性について
前記(一)における主張に同じ
(四) 争点2(四)
(控訴人らの主張)
(1) 被控訴人は、遅くとも平成八年ころから、控訴人らの承諾を得ることなく、イ号物件を製造販売するという故意による不法行為により、少なくとも一億四〇九〇万円の売上を得た。
(2) 控訴人らは、小松ウォール株式会社に対しては四パーセント、文化シャッター株式会社に対しては四・〇五パーセントの実施許諾料の支払を受ける約定をした実績がある。なお、小松ウォール株式会社が四パーセントなのは、同社が本件実用新案権に抵触する製品の製造を止め、控訴人日本スピンドル製造の製品を購入することとしたから、同社が既に受注済みの製品については安めに実施料率を設定したものであり、文化シャッター株式会社が四・〇五パーセントなのは、同社が製造する製品を控訴人らから通常実施権の設定を受けて自ら販売する道を選んだからである。
(3) よって、控訴人らの許諾を受けることなくイ号物件を販売した被控訴人は、右二社より高めの実施料率に基づき、右売上額の五パーセント相当の実施料である七〇四万五〇〇〇円を支払う義務がある。
(被控訴人の主張)
被控訴人が、イ号物件(端パネルから選択された単位のパネル相互を連結して構成した間仕切りパネルを除く。)を製造販売しているとの事実は認めるが、その余の控訴人らの主張事実は争う。
3 争点3(第二次請求)について
(控訴人らの主張)
(一) 控訴人らは、実用新案登録第二〇六七三一六号(実公平六ー三四四八八号)の本件実用新案に係る考案(甲第二号証)のほか、実用新案登録第二一四六九八三号(実公平六ー二三六〇九号)の考案(甲第一号証)及び実用新案登録第二〇一一七三〇号(実公平五ー二四七八七号)の考案(乙第一八号証)の実施品として、平成五年頃より、「木製学校用間仕切SPW」という商品名の製品を製造販売してきた。
右製品は、金属質パネルと木質パネルの材料を組み合わせて複合化した間仕切りパネルであって、外部に露出しない部分には金属を用いて耐久性を高め、室内から外観される箇所には木材を用いて美観を高め、両材料の長所を活かし、欠点を補い合うものであって、これを工場生産し現場で組み立てることによって、施工期間が短く、しかも品質が一定して、金属質パネルに伴う、外観上、冷たく感じ、また、熱伝導が良好であるためパネル自体が冬は冷たく夏は熱くなり学舎としての環境作りに問題があるという点を一挙に解決出来る間仕切りパネルである点において、極めて創作性に富んでいる。
控訴人らは、この創作性によって商品としての価値を高め、この物品を製造販売することによって営業活動を行っているものであるが、被控訴人は、控訴人らの製品の創作性ある商品をそっくり模倣したイ号物件を製造し、これを控訴人らの販売市場と競合する市場において廉価で販売することによって、控訴人らの製品の販売価格の維持を困難ならしめる行為をしているものであって、被控訴人の右行為は、取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を甚だしく逸脱し、法的保護に値する控訴人らの営業活動を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。この点について、東京高裁平成三年一二月一七日判決の所謂「木目化粧紙事件」(知的財産関係民事・行政裁判例集二三巻三号八〇八頁)は、開発に多額の費用がかかったがそれ自体には意匠権も著作権も認められない木目化粧紙をそっくり模倣した化粧紙を廉価で販売したことが不法行為を構成するかが争われた事案であるが、裁判所は、廉価販売や原告製品に対するただ乗り行為などを総合的に観察した上で、民法七〇九条による損害賠償を認めており、本件においても右判決の趣旨が妥当する。
(二) 被控訴人は、遅くとも平成八年頃より、「木製学校間仕切WSPー105」と銘打って、イ号物件を製造販売しているが、被控訴人製品の中には、甲第一六号証の写真に見られるように、現場において組立て終わった商品としての外観上の形態において、完全な模倣(デットコピー)といえるものも含まれており、この点では不正競争防止法二条一項三号で保護されている商品形態の模倣の概念と一致している。
たとえ、単位パネルの組み合わせを入れ替えて、控訴人ら製品と一見すれば外観の異なる、バラエティーに富む間仕切りとしたとしても、所詮は、前記で述べたように金属質パネルと木質パネルの材料を組み合わせて複合化し、耐久性と美観を高め、実用性も高い製品としての創作性をそっくり模倣したものである点において、その行為の違法性は避けようがないのである。
被控訴人は、再三に亘る控訴人らからの警告を無視し、控訴人らの有する本件実用新案のほか、乙第一八号証の実用新案権の考案の技術的範囲に属しないという主張をし、本件不法行為を故意に継続しているものである。
(三) 控訴人らは、少なくとも一〇箇所の工事現場において被控訴人の安値攻勢に敗れ、参考資料が処分済みの工事現場五箇所を除く五箇所の工事現場において、次のとおり、控訴人らの得べかりし利益(控訴人らの見積金額と控訴人らの商品の原価に代えて被控訴人の実績推定金額との差)として一億四二九二万五〇〇円を喪った。
工事名 控訴人見積額 被控訴人実績推定金額
大和高田市土庫小学校 一〇八八万八九〇〇円 二〇〇万円
大津市立田上中学校 七三〇万八九〇〇円 二八〇万円
若狭養護学校 七四九七万六〇〇〇円 一八〇〇万円
安来市十神小学校 四〇〇万円 二一〇万円
秋田商高校 七四一四万六七〇〇円 三五〇〇万円
したがって、この中から、七〇四万五〇〇〇円の損害賠償を請求するものである。
(被控訴人の主張)
新請求は請求の基礎の同一性がなく、訴変更は許されない。
また、時機に遅れた攻撃防禦方法である。
第三当裁判所の判断
一 争点1について
被控訴人が、端パネルのみを用い、別紙第1図に示すように、その単位のパネル(1)を相互に連結して構成した間仕切りパネルを製造し、販売し若しくは販売の申出をし、又は、右間仕切りパネルを製造し、販売し若しくは販売の申出をするおそれがあるとの控訴人らの主張事実を認めるに足りる証拠はない。
仮に控訴人らが右主張にかかる間仕切りパネルを製造販売等したことがあったとしても、そのことにより被控訴人が右主張にかかる間仕切りパネルを製造販売等したことを認めることはできず、そうすると、仮に右主張にかかる間仕切りパネルが本件考案の技術的範囲に属することがあっても、被控訴人が本件考案を実施したことにならないから、本件実用新案権を侵害し又は侵害するおそれがあると認めることはできない。
したがって、被控訴人が、端パネルから選択した単位のパネル(1)を相互に連結して構成した間仕切りパネルを含め、イ号物件を製造し、販売し若しくは販売の申出をし、又は、右間仕切りパネルを製造し、販売し若しくは販売の申出をするおそれがあるとする控訴人の主張は認められず、前記基礎となる事実によれば、被控訴人が製造し、販売し若しくは販売の申出をし、又は、被控訴人が製造し、販売し若しくは販売の申出をするおそれのあるイ号物件は、控訴人らの右主張にかかる間仕切りパネルを除く間仕切りパネルである。
二 争点2(一)について
1 構成要件Aについて
前記イ号物件の構成によれば、イ号物件の構成要件Aに対応する構成は控訴人らの主張のとおりであることが認められ、イ号物件が本件考案の構成要件Aを充足することは明らかである。
2 構成要件Bについて
イ号物件の単位のパネル①ないし⑤は本件考案の構成要件Bを充足するが、⑥ないし⑫は、本件考案の構成要件Bのうち「金属製の下枠(22)」という要件を充足しないから、本件考案の構成要件Bを充足しない。
すなわち、イ号物件の単位のパネル(1、1a)は、全て共通に、上の枠(21)・下の枠(22)・両縦の枠(23)からなる矩形パネル枠を有し、上の枠(21)の上枠主体が中実木製であり、縦の枠(23)の縦枠(23)主体が中実木製であり、矩形パネル枠への取付物である引戸、塞ぎ板、開き戸、障子の各仕様が以下のとおりであって、木製あるいは木材を主体とする部材を嵌めて形成されており、構成要件Bのうち「金属製の下枠(22)」という要件以外の要件を全て充足する。
引戸 面材 シナ合板四・〇ミリメートル
補強材 ラワン集成材
芯材 ペーパーコア
開き戸 面材 シナ合板四・〇ミリメートル
補強材 ラワン集成材
芯材 ペーパーコア
障子 縦框 スブルース
横框 スブルース
塞ぎ板 面材 シナ合板四・〇ミリメートル
補強材 集成材
芯材 ペーパーコア
なお、上の枠(21)は、中実木製の上枠主体の上下面の凹溝か又は上の凹溝のみに溝形金属杆が嵌入・ビス固定されて上面の溝形金属杆が上方に突出しているが、右は付加に過ぎず、上枠主体が中実木製である以上、「木製の上枠(21)」という要件を充足することに変わりはない。
そして、単位のパネル①ないし⑤の下の枠(22)は金属製である。
しかしながら、単位のパネル⑥ないし⑫の下の枠(22)の下枠主体は中実木製である。
したがって、単位のパネル①ないし⑤は構成要件Bのうち「金属製の下枠(22)」という要件を充足するが、単位のパネル⑥ないし⑫は構成要件Bのうち「金属製の下枠(22)」という要件を充足しない。
すなわち、単位のパネル⑥ないし⑫の下の枠(22)は、中実木製の下枠主体の下の横溝に溝形金属杆が嵌入・ビス固定されて該溝形金属杆の下端部分が下枠主体の下方に突出しているところ、中実木製の下枠主体の端部が縦の枠(23)と連結しているのであって、溝形金属杆の端部が縦の枠(23)と連結しておらず(乙四、二〇の一、二、弁論の全趣旨)、木製と評価しうる上の枠(21)の中実木製の上枠主体の突出部分を除く厚さが約三〇ミリメートル、全体の厚さが約五〇ミリメートルとなっているのに対し、下の枠(22)の中実木製の下枠主体の突出部分を除く厚さが約八八ミリメートル、全体の厚さが約一〇〇ミリメートルとなっていることを考慮すると、中実木製の下枠主体をもって下枠(22)と評価することができ、かつ、上の枠(21)以上に下の枠(22)が木製であると評価することができる。
控訴人らは、被控訴人が中間パネルの下の枠(22)が金属製であるとすることに同意した結果となる主張を原審の平成一〇年一〇月六日付の第八準備書面において行っており、これによると中間パネルの下の枠(22)が金属製であることにつき当事者間で争いがないかの如き主張をするが、右のようには解されず、右主張は認められない。
3 構成要件Cについて
イ号物件の単位のパネル①及び②、⑥ないし⑫は、単位のパネルの縦の枠(23)の内面の全長に亘ってガラス障子の当たり部分などパネル部材の端縁が嵌まる内縦溝(25)が形成されているから、本件考案のCの構成要件を充足する。
しかしながら、単位のパネル③ないし⑤は、単位のパネルの縦の枠(23)の全長に亘って内縦溝(25)は設けられていない(甲第三号証、弁論の全趣旨によると、横の桟の上側にガラス又はガラス障子の端縁が嵌まる内縦溝(25)が設けられているのみで、その長さは縦の枠(23)の全長の三割程度であることが認められる。)から、本件考案のCの構成要件を充足しない。
4 構成要件Dについて
イ号物件の単位のパネルは、縦の枠(23)の外面の全長に亘って外縦溝(26)が開設され、そこには単位のパネルを連結するための連結片が嵌入固定されており、単位のパネルの連結時にそれぞれの連結片を相互に組み合わせてビス固定するから、本件考案のDの構成要件を充足する。
もっとも、右連結片は、外縦溝(26)の全長に亘っておらず、連結片の下端が縦の枠(23)の下端から浮き上がっており、該連結片の側部で、連結されたパネル間の隙間を隠す隙間隠しが下方に延長しているが、右の点は構成要件の充足を否定するものとならない。
すなわち、本件考案のDの構成要件にいう「該縦枠(23)の外面の全長に亘って」という文言は、本件請求項上、「外溝条(26)が開設されている」にかかる文言であって、「単位パネルを連結するための方立(50)」にかかる文言でないと解釈されるから、方立(50)が縦枠(23)の外面の全長に亘っている必要はない。
なお、本件明細書の「方立(50)は、・・・単位パネル(1)の縦長さと同じ長さである。」(4欄42行ないし45行)とされているのは実施例である。
5 小括
そうすると、イ号物件(前記一説示のとおり、控訴人ら主張にかかる端パネルのみからなる間仕切りパネルを除く間仕切りパネルである。)は、端パネルと中間パネルとから構成される間仕切りパネルであるところ、単位のパネル⑥ないし⑫が本件考案の構成要件Bを充足しないから、単位のパネル①又は②と組合わされる場合も、単位のパネル③ないし⑤と組合わされる場合も、本件考案の技術的範囲に属しない。
三 争点2(二)について
1 均等論について
控訴人ら引用の最高裁判決があることは控訴人ら主張のとおりであるところ、本件においては、下の枠(22)が金属製であるか否かの点のほかにも本件考案の構成要件を充足していない点があるが、控訴人ら主張の点についての均等論の成否を検討する。
2 均等要件①について
(一) 証拠(甲二の一・二、八、九の一ないし三、乙二、五ないし七及び弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。
(1) 本件実用新案の登録請求の願書に添付された当初の明細書には、以下の記載を含む記載があった。
(実用新案登録請求の範囲)
① 単位パネル(1)を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであって、単位パネル(1)は上枠(21)、下枠(22)及び両縦枠(23)にて形成される矩形の木質パネル枠(2)に木質のパネル主体を嵌めて形成され、縦枠(23)の内面の全長に亘ってパネル主体の端縁が嵌まる内溝条(25)が形成され、該縦枠(23)の外面の全長に亘って単位パネル(1)を連結するための方立(50)が嵌合する外溝条(26)が開設されている間仕切りパネル
② 下枠(22)は金属製である実用新案登録請求の範囲第1項に記載の間仕切りパネル
③ ないし⑥略
(従来の技術及び問題点)
近時新設される校舎の殆どは、鉄筋コンクリート作りの構体の内側を金属質のパネルにて複数の教室に、或いは教室と廊下とに仕切っている。
これは、コストの引き下げと耐久性の調和を図った結果であるが、金属質のパネルは外観上、冷たく感じ、又、熱伝導が良好であるため、パネル自体が冬は冷たく夏は熱くなり、学舎としての環境作りには問題があった。
校舎の構体は鉄筋コンクリート作りであっても、木材を用いて間仕切りすれば、上記の問題は緩和される。
しかし、木材で間仕切りを施すには、現場での大工仕事が主となり、施工期間が長くかかり、コスト高を招来すると共に施工状態にばらつきがあり品質が一定しない新たな問題が生じる。
(実施例)
単位パネル(1)は工場で大量生産され、両端の2枚のパネル(1)、(1)及び中間の2枚のパネル(1a)、(1a)は夫々同形式であり、端パネル(1)と中間パネル(1a)の高さ及び幅長さは同一に形成されている。
端パネル(1)は横桟(24)を具え、その上部にはパネル主体である2枚のガラス障子(3)、下部には同じくパネル主体であるガラス窓付きの引戸(4)が嵌まっている。
中間パネル(1a)の上部には端パネル(1)と同様のガラス障子(3)、下部には塞ぎ板(5)が嵌まっている。
各パネルのパネル枠(2)は上枠(21)、下枠(22)、両縦枠(23)及び縦枠(23)間の上部に設けた横桟(24)によって縦長の矩形体に形成され、上枠(21)、縦枠(23)及び横桟(24)は反りや狂いの少ない木材の集成材にて形成されている。
下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。
方立(50)は金属板を屈曲して単位パネル(1)、(1a)の外溝条(26)に緊密に嵌合する様な中空の断面矩形の杆体に形成され、単位パネル(1)の縦長さと同じ長さである。
(2) この出願に対し、特許庁の審査官によって、平成五年八月二〇日付けで、この出願の考案は引用例イ、ロ、ハから推考容易と認められるから実用新案法第三条第二項により実用新案登録を受けることができない並びにこの出願の考案は明細書及び図面の記載が不備と認められるから実用新案法第五条第三項、第四項及び第五項に規定する要件を充たしていないという拒絶理由の通知がなされた。
右引用例ロは、木製サッシに関するものであって、従来の軽金属サッシの欠点を是正し、木材独自の暖かさと軽金属サッシの機密性を兼備えた木製サッシを提供するものであり、引用例ハは、構築物における壁体の構成装置に関するものであって、周囲の枠(周枠)内に上部材と下部材とを嵌合部材を用いて分離自在に結合した壁体を固着したものである(甲九の二、三)。
記載不備とされた点は、「明細書の記載中、下枠(22)の材質に関する記載が不明瞭である。(金属製であるにもかかわらず『木質パネル枠』と記載されている。)」というものである。
(3) これに対し、控訴人らは、平成五年一二月一七日付けで、特許庁長官に対して自発的に手続補正書(甲九の三)を提出し、当初の明細書を補正して本件明細書と同様の記載とした。
右補正部分は次のような内容であった。
当初の明細書の実用新案登録請求の範囲のうち、①の「単位パネル(1)は上枠(21)、下枠(22)及び両縦枠(23)にて形成される矩形の木質パネル枠(2)に木質のパネル主体を嵌めて形成され」が、「単位パネル(1)は上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製の或いは木材を主体とするパネル主体を嵌めて形成され」と変更され、②、③、⑤、⑥が全て削除され、④の「乃至第3項の何れかに」の文言が削除された。
従来の技術及び問題点の記載について、「又、下枠(22)を木製とすると、例えば引戸用レールの取り付けに対する耐久性、靴の踏み付けに対する耐久性が低下する問題が生じる」との記載が付け加えられた。
作用及び効果の記載について、「又、目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや、靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる」との記載が付け加えられた。
もっとも、実施例の「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」との記載はそのまま維持されており、当初の明細書にも本件明細書にもそれ以外に単位パネル(1)の下枠(22)の材質についての記載はない。
(4) 控訴人らは、右補正書と同時に、特許庁審査官に対して、「拒絶理由の中で、審査官は、『下枠(22)の記載(材質の誤記と認められる。)に関する記載が不明瞭である』と指摘されている。本考案のパネル枠は、下枠(22)以外の縦枠(23)、上枠(21)を木材にて形成し、この点から木質パネル枠としたにすぎない。しかし、無用の誤解が生じることを避けるために、訂正明細書では『木質』の語句を省きました。」と記載した意見書を提出した。
(5) 以上の経過を経た上で、本件考案は出願公告され、実用新案権として登録されるに至った。
(二) 公知資料である前記引用考案と前記出願手続の経過による補正とからすると、本件考案の出願当時、従来の軽金属サッシの欠点を是正して木材独自の暖かさと軽金属サッシの機密性を兼備えた木製サッシの構成及び周囲の枠(周枠)内に上部材と下部材とを嵌合部材を用いて分離自在に結合した壁体を固着する構築物の構成はいずれも公知の技術であったこと、そして、本件考案の当初の明細書には、金属製の下枠(22)と木質の縦枠(23)・上枠(21)及び木質のパネル主体とから成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(当初(21)の明細書の実用新案登録請求の範囲②)のほかに下枠(22)の材質も木質で木質の縦枠(23)・上枠(21)及び木質のパネル主体から成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(同①)とが記載されていたところ、下枠(22)の材質が木質である単位パネルの間仕切りパネル(同①)を除外したことが明らかである。
そうすると、本件考案の特徴は、金属製の下枠(22)と木質の縦枠(23)・上枠(21)及び木質のパネル主体から成る単位部材を複数横に連結した間仕切りパネルとしたことにあったというべきである。
したがって、単位部材の下枠(22)を金属製にしその他の構成部分を木製とした点は、右単位部材を横に連結して間仕切りパネルを構成するという点とともに、本件考案の本質的部分を成しているというべきである。
したがって、下枠(22)を金属製にした右部分については均等を主張する余地がない。
控訴人らは、本件考案において、端パネルの下枠(22)が金属製であること、また、中間パネルの下枠(22)が金属帯板の曲げ加工によって形成される金属製の部分が必要であることが本件考案の本質的部分であるとした上で、イ号物件において、端パネルにおける下の枠(22)が金属製であるほか中間パネルの下の枠(22)が溝形金属杆を用いていることにつき、端パネルのように下枠(22)が金属帯板の曲げ加工によって形成されている金属製であるものと、右の中間パネルの下枠(22)のように、その他に中実木製の下枠主体とを嵌入・ビス固定しているものとの構造上の差異は、本件考案の本質的部分ということはできないと主張するが、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)は、中実木製の下枠主体の下面に下方に突出して溝形金属杆が嵌入・ビス固定されたもので、突出部分を除く中実木製下枠主体の厚さが約八八ミリメートル、全体の厚さが約一〇〇ミリメートルとなっており、縦枠(23)に連結しているのが中実木製の下枠主体であって溝形金属杆でないというものであるから、前記説示したことからすれば、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)と異なる本件考案の金属製下枠(22)の部分が本質的でないということはできない。
したがって、均等要件①は認められない。
3 均等要件⑤について
前記のとおり、本件考案についての実用新案出願手続の経過からすると、本件考案については、当初の明細書の段階から、金属製の下枠(22)と木質の縦枠(23)・上枠(21)及び木質のパネル主体とから成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(当初の明細書の実用新案登録請求の範囲②)のほかに、下枠(22)の材質も木質である単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(同①)が想定されていたところ、控訴人らが、それを補正する段階で、意識的に、下枠(22)の材質も木質である単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(同①)を除外したことは明らかである。
そして、本件では、当初の明細書から、中間パネルを表す記号が(1a)ないし1aとされ、端パネルを表す(1)ないし1という記号とは区別されて使用されているにもかかわらず、一貫して実施例の「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」との記載が維持されており、当初の明細書にも本件明細書にも、それ以外に端パネル及び中間パネルの総称である単位パネル(1)の下枠(22)の材質についての記載がないのであるから、右「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」との記載は、端パネルの下枠(22)と中間パネルの下枠(22)とを問わず妥当するものといわざるをえない。
また、本件考案は、出願当初から金属製の下枠(22)と木質の縦枠(23)・上枠(21)及び木質のパネル主体とから成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネル(当初の明細書の実用新案登録請求の範囲②)が予定されており、補正の段階で、明細書に付け加えられた「下枠(22)を木製とすると、例えば引戸用レールの取り付けに対する耐久性、靴の踏み付けに対する耐久性が低下する問題が生じる」とか、「目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや、靴の踏み付けに対する耐久性を高めることができる」といったことは、右のような金属製の下枠(22)から成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネルにおいて、端パネルの下枠(22)が金属製であることによって得られる特有の効果を述べたものと解される。
そして、当初の明細書によれば、既に単位パネルの用途として端パネルと中間パネルとが、また、単位パネルの下枠(22)の材質として主として木質と金属製とが想定されていたことは明らかであるから、それらを組み合わせた間仕切りパネルとしては、主として四種類の構成(① 端パネル及び中間パネルの全てについて下枠(22)を木質とする構成、② それらの全てについて下枠(22)を金属製とする構成、③ 端パネルの下枠(22)を金属製とし中間パネルの下枠(22)を木質とする構成、④ 端パネルの下枠(22)を木質とし中間パネルの下枠(22)を金属製とする構成)がありうることもまた、その段階で容易に想到できたはずである。
そして、控訴人らは、本件実用新案出願手続において、本件考案については、特許庁審査官から「下枠(22)の材質に関する記載が不明瞭である。」との指摘を受けた段階で、本件考案を、イ号物件のような、端パネルの下枠(22)のみを金属製とし中間パネルの下枠(22)をほとんど木質といってよいものとする構成を含む間仕切りパネルの考案に補正することは、非常に容易なことであったといえる。
それにもかかわらず、控訴人らは、前記認定のとおり、単に当初の明細書の実用新案登録請求の範囲の記載のうち、①の、「単位パネル(1)は上枠(21)、下枠(22)及び両縦枠(23)にて形成される矩形の木質パネル枠(2)に木質のパネル主体を嵌めて形成され」を、「単位パネル(1)は上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製の或いは木材を主体とするパネル主体を嵌めて形成され」などと補正しただけであり、しかも明細書の詳細な説明の実施例の「下枠(22)は金属帯板の曲げ加工によって形成されている。」との記載はそのまま維持しただけでなく、右補正と同時に特許庁審査官に提出した意見書において、「本考案のパネル枠は、下枠(22)以外の縦枠(23)、上枠(21)を木材にて形成し、この点から木質パネル枠としたにすぎない。しかし、無用の誤解が生じることを避けるために、訂正明細書では『木質』の語句を省きました。」と、単位パネルの下枠(22)は、端パネルと中間パネルとを問わず、全て金属製とすることとしたとの意見まで述べているのである。
これらの事実からすれば、控訴人らは、端パネルの下枠(22)と中間パネルの下枠(22)とを当然に同一の材質にすることのみを前提とし、異なる材質にすることを前提にせず、右四種類の容易に想到できる間仕切りパネルの構成のうち、単位パネルの下枠(22)が端パネルと中間パネルとを問わず全て金属製のものとする構成に意識的に限定し、それ以外の構成のものは意識的に除外したものといわざるをえない。
そして、イ号物件の中間パネルの下の枠(22)は、金属製である端パネルの下枠(22)と異なり、前記認定のとおりの木質というべきものであるから、イ号物件は、控訴人らが意識的に除外した、端パネルの下枠(22)と中間パネルの下枠(22)との材質が異なって端パネルの下枠(22)を金属製として中間パネルの下枠(22)を前記認定のとおりの木質とした構成のものであると認められる。
したがって、均等要件⑤は認められない。
4 小括
そうすると、その余の均等要件について検討するまでもなく、いずれにしても、イ号物件は本件考案の構成と均等なものとは認められないというべきである。
四 争点2(三)について
本件請求項を控訴人ら主張のように解することはできない。
実用新案法二六条、特許法七〇条一項、二項によれば、実用新案の技術的範囲は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(特許法七〇条一項)のであり、右場合において、実用新案登録請求の範囲に記載された「用語の意義」を解釈するために、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲以外の記載及び図面を考慮するのである(特許法七〇条二項)。
したがって、特許法七〇条二項により、考案の詳細な説明中に記載されているが実用新案登録請求の範囲に記載されていない事項を実用新案登録請求の範囲に記載されているものと解釈することが容認されるわけではない。
本件考案の実用新案登録請求の範囲には「単位パネル(1)を横に連結して室内を仕切る間仕切りパネルであって、単位パネル(1)は、木製の上枠(21)、金属製の下枠(22)及び木製の両縦枠(23)から成る矩形のパネル枠(2)に木製或いは木材を主体とするパネル部材を嵌めて形成され」との記載があり、端パネルと中間パネルとを区別、限定したような記載はなく、まして、人の出入りする開口部のある端パネルの構成のみを代表的に規定したものと解釈しうるような記載は存在しない。
控訴人ら主張のように、本件明細書の詳細な説明で、「下枠(22)を木製とすると、例えば引戸用レールの取り付けに対する耐久性、靴の踏みつけに対する耐久性が低下する問題が生じる。」とか、「また、目立たない下枠(22)は金属製としたため、引戸用レールの取り付けや、靴の踏みつけに対する耐久性を高めることができる。」旨の記載がある(公報3欄4行から六行、25行から27行、6欄5行から7行)が、右は、金属製の下枠(22)から成る単位パネルを横に連結する間仕切りパネルにおいて、端パネルの下枠(22)が金属製であることによって得られる特有の効果を述べたものと解され、それを根拠にして、本件請求項の「単位パネル」の「金属製の下枠(22)」という要件が端パネルについての構成を代表的に規定したものというような、明らかに実用新案登録請求の範囲に記載された文言から読み取れない解釈をすることはできない。
控訴人らの主張は、実用新案登録請求の範囲の解釈についての全く独自の見解であって、採用できない。
五 争点3について
1 争点3にかかる控訴人らの請求は、従前の請求と請求の基礎が同一であり、また、従前の証拠資料に基づき判断しうるものであるから、時機に遅れているが、訴訟の遅延とならないというべきである。
2 仮に控訴人ら主張の不法行為理論が肯定されるとしても、イ号物件が現場において組み立て終わった商品としての外観上の形態において完全な模倣(デットコピー)といえるものも含まれているとの主張事実は、これを認めるに足りない
(甲第一六号証が沿うごときであるが、未だ右主張事実を認めるに足りない。)
のみならず、イ号物件は、前記のとおり、本件考案の構成要件と異なる構成を有しており、本件考案の実施品とも同様に異なる点があるものと推認される。
いずれにしても、争点3の主張は認められない。
六 まとめ
控訴人らの責任原因の主張が認められないから、控訴人らの請求はいずれも理由がない。
よって、原判決は相当であって、本件各控訴は理由がなく、当審請求も理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 若林諒 裁判官 西井和徒)
<以下省略>